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クレーム対応・クレーマー対策はリーダーの仕事

食品表示偽装や毒物混入が横行し、福田政権が積極的に進めた「消費者庁」設立に代表されるように、消費者保護が政策的にも重視され始めています。このような社会の動きの中、小企業、商店でも、クレーム対応・クレーマー対策をしっかりと確立して、お客様からの信頼を獲得していかなければ、事業の継続が難しくなってきています。

このような風潮を見る限り、従来のようなネガティブな意味での「クレーム対応、クレーマー対策」は時代遅れなものになっているといえるでしょう。今までは、「難癖をつけられる」「儲かるわけでもないのに、迷惑だ」といった、クレーム、クレーマーに対するネガティブなイメージがクレーマー対応・クレーム対策の高度化を阻んできたといえます。売ることが第一で、クレームや苦情といったネガティブなマーケティング情報は疎んじられていたのですが、少子高齢社会で、一人ひとりのお客様が重みを増してきているのですから、一本の苦情、クレームを軽んじずに、適切な対応をしていかなければ、ひいては多くのお客様を失うことになるかもしれないのです。

本来、クレーマー対応・クレーム対策は顧客満足の基本にあるものです。企業や商店の事業継続、事業拡大を目指すのであれば、どのような状況にも対応できるクレーマー・クレームマネジメントの体制を整えることが、これまでになく真剣に、強く要求されているのです。ここでは基本的にコンサルタントや外注をしなくてもいい、手作りなクレーマー・クレームマネジメントの方法を考えましょう。クレーマーマネジメントの基本はまず2つのことを明確にすることから始まります。

第一に、クレーム、クレーマーを適切にマネジメントするための「担当者」をつくることです。

クレームが寄せられたときに、はじめて「誰が対応するんだ?」と右往左往するのはクレーマーマネジメントでは禁物です。

専門のスタッフを確保する必要がある理由には2つあります。ひとつは、クレームや苦情を処理するためにはスタッフの心の準備ができていなければ、お客様に失礼な対応をしてしまうからです。常にクレームや苦情を受け止める「心の準備」をしているスタッフをあらかじめ定めておく必要があります。二つは、クレームや苦情の解決プロセスは短期で決着がつくものばかりではありません。中期長期的にお客様と一緒に解決していく必要があるケースもあります。長期的なやり取りが必要になるケースの場合、担当スタッフがコロコロと変わってしまっては、お客様に不快感を与えてしまいます。クレームを専門に扱うスタッフが最初から最後までケアするようにしなければ、お客様の気分を害することになるでしょう。

このような理由から、「クレーム・クレーマー対応の担当者」をあらかじめ決めておくことは、クレーマーマネジメントの基本中の基本です。ここで前提となっているのが小さな企業や商店ですから、社長や経営者、店長、重役が担当するのが一番いいでしょう。

お客様にとって、最高責任者、現場のトップが対応してくれるというのはとても満足感を与えるからです。クレームを寄せてくださるお客様は「お客様には特別に対応しております」というスペシャル感に弱いといわれています。

リーダーである人が、自らがクレームや苦情を受け止める。それは容易なことではありません。ストレスもあるかもしれません。クレーマー対応の専門家の中には、「あまり高位のスタッフを対応に出すべきではない」と指導される方も多いといいます。確かに一理あることです。不用意に重役や社長がクレーマー対応をしては、悪意あるクレーマーの場合、危険性があると思われます。

しかし、小規模な企業や商店の場合は、また別の対応が必要なのではないでしょうか。小規模な企業や商店の場合、それほど多くのスタッフがいるわけでもなく、元来、社長や重役に多くの責任と権限が集中しているものです。数人しかいない会社で、クレーマーがやってきたら、奥に引っ込み、他のスタッフに対応させるなどという姿勢は、他のスタッフに対してどのようなイメージを与えるでしょうか?いうまでもないでしょう。頼りないリーダー像が焼きついてしまいます。

クレーマーに四苦八苦しながらも、誠意ある対応をしているリーダーの背中を見て、他のスタッフは信頼を寄せ、会社や店のチームワークは高まるでしょう。たとえ、悪意あるクレーマーだったとしても、リーダーが率先して戦っている姿がスタッフ全員のモチベーションを強くし、最終的には一致団結した対応ができるはずです。リーダーがクレーム、クレーマーに対応することは、比較的小さな組織であれば、組織内部に大きな副次的効果をもたらしてくれるのです。

実は、リーダーがクレーマー対応の担当者をするべき理由には、もっと大きな意味合いがあります。社長や店長がクレーム対応をするべきという最大の理由は、「ノウハウの蓄積を独占する」というものです。

クレームや苦情は何より経営上の最大の資源です。そこには金脈が眠っているのです。どんな不満があるのかを把握して、商売に生かしていくことができるのです。この大切な役割を従業員に任していてはよい経営者にはなれません。

クレーム、苦情から得られる経営情報を独占し、さらに経営の拡大に向けて勉強していくこと、それが社長、店長にとってのクレーム・クレーマー対応なのです。

第二に、クレーム対応・クレーマー対策にどのような手続きで望むのかという基本的なマニュアルを作成します。

先ほど、クレームを寄せるお客様は「スペシャル感」に弱いといいましたが、それは個別のケースごとに別の対応をするということではありません。あくまで、クレームへの対応は「フォーマット」に基づいたものでなければいけません。それこそ、モンスタークレーマー的な人がやってきたときに、なし崩しに要求を受け入れるような結果になるかもしれません。

毅然と対応するためにも、クレーム対応の手順、基準は定めておきましょう。マニュアルを店の開店の最初の日から作ることは無理です。経営を続けていく中で、クレーム対応の担当をしている店長や社長などリーダーが経験していくことで作られていくのです。

そのためにも、クレーム対応の担当者は記録をしっかりとしていく必要があります。いつ、どのようなクレームが寄せられ、誰が対応し、どのような解決策をとったのか。クレームの再発防止に向けて、サービスや商品をどのように改善したのか。これらをしっかりと記録し、後で本格的なマニュアルを作成するために参考となるようにします。

その際には、必ずクレーム処理の成功パタンを作り上げることが大切です。どのように対応したら、お客様が満足し、迅速に解決にたどり着けたか。手続きとスケジュールを作るようにしましょう。