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攻撃的なクレーマーの態度を緩和する

感情的なお客様、クレーマーが攻撃的な場合、クレーム処理・クレーム解決に入る前に、まずは攻撃性や感情性を緩和することが必要です。

クレーム対応時に、お客様の攻撃性をどのように緩和したらいいのかを考えてみましょう。

攻撃性の背後にあるもの


心理学では、人間が攻撃性(aggressiveness)を持つようになる背景には、「怒り・恐怖」があるとしています。心の中に怒りや恐怖があることで、外面的には攻撃性として表現されるのです。

お客様が過度に攻撃的になっている場合、お客様の心理は「強い怒りや恐怖」を感じていることが考えられます。お客様が店や会社の製品サービスに対して直接的に怒りや恐怖を感じているかどうかははっきりは分かりませんが、何かしらの怒りや恐怖が攻撃性の背景にあるのです。

一般的に、人間の攻撃性の究極的な目的は「他者否定」です。「自分以外の人を否定する」ということですね。つまり、攻撃性は「自己防衛(プライド保護)」なのです。クレームを持ち込まれたお客様の場合、店や会社、スタッフを否定することが目的になります。

そもそも、自己防衛やプライド保護が必要だということは、「攻撃されている」「プライドが傷つけられている」という認識があることになります。何らかの満たされない欲求不満(フラストレーション)があるということです。クレーム対応の場合では、製品サービスに対する「不満」があたるでしょう。

欲求が満たされないことが引き金


心理学者のダラード(J.Dollard)は、「フラストレーション-攻撃仮説(欲求不満-攻撃仮説)」を発表しました。人間は「他者・自己・社会に対する欲求」が満たされないとき、自尊心が傷ついて攻撃的になると主張しました。

心理学では攻撃性を生む代表的な状況を以下の6つにまとめています。

(1)外部から「身体的な危害・損傷・攻撃」を受けた時に生じる「自己防衛的な怒りや攻撃性」

(2)外部から「精神的な侮辱・差別・名誉毀損(誹謗中傷)」を受けた時に生じる「自尊心(自己の尊厳)に基づく怒りや攻撃性」

(3)大切な「家族・友人・知人」が傷つけられたり殺されたりした時に生じる「共感性と復讐心に基づく怒りや攻撃性」

(4)自分が所有権を主張できる「財産・金銭・債権」が奪われたり盗まれたりした時に生じる「財産保護的な怒りや攻撃性」

(5)社会的な不正義が罰せられずにいるとき、「倫理的な意見・常識的な判断・共感的な優しさ」などが否定された時に生じる「倫理感情や公共心に基づく怒りや攻撃性」

(6)自分の欲求が満たされない時に生じる「フラストレーション(欲求不満)に基づく怒りや攻撃性」

クレーム対応のケースでは、(4)(6)のケースが該当するでしょう。

クレームをくださるお客様の立場から言えば、「製品・サービスを購入した客」である自分は、クレームを強く主張する権利があるという論理なわけです。

本来、購入した自分は製品サービスに満足するはずなのに、店や会社、スタッフの不手際で実現されなかった。「自分の欲求が阻害されたこと」に対して攻撃性が生じているのです。

さらに、お客様が抱いていた「自分がこうしたい・ああしたい」という欲求を満たせなかったことによる攻撃性かもしれません。

攻撃性のほぐし方


このような攻撃性をどのように解消するべきかといえば、スタッフとお客様の間で信頼感や肯定感を作り上げていくことで、「友人」になることです。お客様は権利や欲求が阻害されたことに対して攻撃性を発揮しているのですから、そのようなフラストレーション状態を理解し、ともに解決していく友達なのだと理解してもらえば、お客様は攻撃する必要がなくなるのです。

クレーマーを生み出しやすい社会


今日、悪質クレーマーが増えたといわれていますが、それは社会と個人の関係の変化があるといわれています。現代社会では、「誰からも自分の価値や魅力を認めてもらえない」という不満を持つ人が増えています。
シュウカツがうまくいかない。
解雇や業績評価で低く見積もられる。
離婚した。
彼氏彼女ができない。

誰もがこのようなフラストレーションがたまりやすい状況にあるといっていいでしょう。

「社会から疎外されている」というフラストレーションが攻撃性となって、店や会社、スタッフに向かっているのです。

もしかしたら、製品サービスに対する不満は単なる「スイッチ」にすぎないのかもしれませんし、もしかしたら「製品サービスに対する不満」もないのかもしれません。クレームという攻撃性を発揮できるきっかけを手に入れただけなのかもしれません。

こういう社会的状況でクレーム対応をする場合、お客様の話される内容をよく聴き、お客様がどのようなフラストレーションを感じているのかをよく理解していくことが大切になります。

マニュアル通りに処理すればいいという簡単な事例ばかりではなく、お客様ごとに柔軟な対応が必要になる事例が今後さらに増えることになるでしょう。