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カウンセリング技法をクレーム受付の初期段階に応用する

臨床カウンセリングの世界では、様々なカウンセリング技法が開発されてきました。

カウンセリングは、患者との関係を構築していくための様々な知見を与えてくれるため、クレーム対応・クレーマー対応に多くが応用できるでしょう。

カウンセリングの重要な点は、傾聴、受容、共感的理解といわれています。このような要素は、クレーマー対応・クレーム対応の第一段階に求められる内容と同じです。お客様のクレームを聴き、受け入れ、共感していくこと。これがクレーマー対応・クレーム対応の受付をするときに必要なスタッフの態度です。

今回は、カウンセリングの技法の代表的なものを見て、クレーマー対応クレーム対応に応用していきましょう。ここでは以下の6つの技法を紹介します。

(1)傾聴・擬似体験・感情移入


傾聴とは、患者が話す事実を好意的に聴くことです。聴くといっても、ただ単に「そうなんだね」と受け入れるのみではなく、傾聴した内容を「自分だったらどうだろうか?」というように「擬似体験」を想像してみます。疑似体験を通じて、患者へ感情移入していくことになります。

クレーム対応では、お客様の話す内容を好意的に聴き、「自分がお客様の立場だったらどうだろうか?」と疑似体験し、最終的にはお客様に感情移入していくことがクレーム受付のファーストコンタクトでは大切です。

感情移入しなければ、お客様が本当にどのような解決を望んでいるのかを理解することが難しいです。特に、お客様は強い不満やストレスを感じているのですから、言葉をそのまま受け取ることは危険です。

とても強い言葉であなたを責めているとしても、それはお客様の本心であるとは考えにくいのです。お客様の多くは怒りをどこに向けていいのか分からず、とりあえず、担当者のあなたに怒りを向けているにすぎないからです。

お客様がどんなに攻撃的になっているとしても、お客様の立場を尊重し、お客様に感情移入していくこと、それによってお客様との信頼関係を作っていくことがクレーム処理のスムーズな進行に不可欠のものになるのです。

この感情移入こそが、ひいては、クレーマーが上客になる基盤となるでしょう。


(2)うなづき


傾聴・擬似体験・感情移入が大切であるとしても、これはあくまでスタッフの頭の中で起きていることで、お客様には伝わりません。

そこで、「私はあなたの話していることに耳を傾けていますよ。本当に、あなたの言うとおりですね」ということをお客様に明確に伝える必要があります。

そこで重要なことが「うなずき」です。

うなずくことで、お客様に「好意的に聞いている」ということを伝えることができます。お客様がブレスを置くところを目安にうなずきを入れていくのです。あまりに頻繁にうなずいては、反対に「馬鹿にされている」「心から聞いていない」というイメージをお客様に与えてしまうので、適当な間隔が必要ですし、適切なところで入れる必要があるのです。

さらに、うなずきにも強弱があり、お客様の感情が高まっていそうな場所では強くうなずき、「強い共感・同意」を表明したりします。軽いうなずきはお客様の言う内容に「同意する」ということを伝えることができます。

「うなずき」がうまくお客様に伝われば、これだけでもお客様の怒りや不満など、攻撃的な態度は大きく緩和されることでしょう。


(3)オウム返し(くりかえし)


うなずきとともに、「オウム返し」も効果的に使うことができます。オウム返しはお客様の話したことを、スタッフが繰り返して話す技法です。オウム返しすることで、お客様はご自身が「どのようなことをいっているのか」「自分は何を言っているのか」を自己理解してもらうことができるのです。

お客様が感情的になっていて、本当に支離滅裂なことをいっているときには、スタッフはお客様の話している内容をオウム返ししてみましょう。

そうすることで、お客様は、スタッフの口から、自分の言っていることを聞くことになります。お客様は自分が話している支離滅裂な内容を客観的に理解することでしょう。

オウム返しは、「鏡」の役割を果たすのです。お客様と同じ発言・行為をすることで、お客様は自分自身を見ることになるのです。お客様はスタッフを通じて自己洞察・自己理解をしていくことになります。

(4)言い換え


お客様の話された内容を他の言葉や表現で言い換えることも重要な技法です。一つの表現は何かとイメージを固定化してしまいます。いい意味でも悪い意味でもです。

複数の表現を用いることで、一つのことを多面的に見ることができます。言い換えはこのように、一つの物事を多面的に見るということをお客様に促すことができるのです。

多面的に一つの物事を見ることができれば、多くの場合、人は客観的になります。

主観とは、通常、一つの視点に固執することから始まります。「この点ではこうだ」「あの点ではああなっている」と多様な見方を理解すれば、人は冷静になり、自らを客観的に省みることができるようになります。

(5)明確化


感情的になっているお客様は、きっと遠まわしだったり、あいまいな発言を繰り返すことでしょう。お客様は、店や会社の製品サービスに不満を持っているのは確かですが、それについて明確な問題解決の方向性を持っているわけではありません。

そもそも店や会社がどのような対応をするのかさえ分からない状態で、クレームを持ち込んでいるのですから、お客様としても手探りで話しているのです。結果、お客様の話している内容は、あいまいで、論理的でありません。

そこで、スタッフはお客様の話されている内容を構造的に理解して、その重要な部分を明確にしていくことが大切です。お客様は何を問題としているのかを明確にまとめるとともに、何を求めているのかを把握しましょう。

この作業はクレームの受付書類を作成する際にも役立ちます。


(6)要約


感情的になっているお客様が話される内容は、一般的に支離滅裂なものです。スタッフのみなさんはよく「何言ってるんだか!!」と控室で愚痴ることが多いでしょう。

しかし、お客様が支離滅裂なことを話されるのも当たり前なのです。お客様がいだいている不満の内容を整理する余裕はないからです。

支離滅裂な内容を合理的にまとめて、整理していくことはスタッフの役目なのです。構造的にお客様の不満をまとめることで、お客様自身も冷静に「どうしたら問題が解決できるか」ということを理解するようになります。

お客様が冷静になり、問題を客観的に把握してくれるようになれば、その後クレーム処理・クレーム解決はスムーズに進むでしょう。