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クレーマー分類:激怒者と積極的行動者

クレームを下さるお客様の分類のうち、激怒者と積極的行動者について説明します。

激怒者にカテゴリーされるお客様は、最もクレーム対応をするスタッフに衝撃的なお客様です。

お店(会社)にクレームを言うことなく、心深く怒りを抱いて、他の場所でお店(会社)に対しての不満や欠点を広めてしまうのです。その上、激怒者はお店(会社)から無言で立ち去るのです。クレームは聞こえてこないが、着実にお店(会社)にマイナスの影響がでてくることになります。

普通、お店も会社も商品サービス提供者側は激怒者のようなお客様を無視する傾向にある。なぜなら、お店(会社)に直接クレームを言わずに、友人や家族、知人にマイナスの口コミを広げていく「アンフェア」なお客様だとして無視しているのです。

しかし、彼らの口コミ活動は大きな意味を持っています。口コミが個人的な偏向によってゆがめられているものだと、聞いている人が理解してくれたとしても、実際にちょっとでもそのお店や会社の商品サービスで木にかかることがあれば、「あぁ、やはり、あの人が言っていたことは本当だ。ここの店のサービスには欠点がある」と感じることでしょう。

いわば、人に先入観を与えてしまうのです。ですから、激怒者をどのように低い数に抑えていくかが重要なクレーム対応になります。できれば、激怒者ではなく、発言者となってもらえるようにお客様の心を解きほぐすような接客サービス、クレームを積極的に受け入れる体制・システムをお客様に見せて、浸透させていくことが必要でしょう。

次に、積極行動者は、活動家に似た傾向を持っています。

お店(会社)にクレームを下さる一方、自分の周りの人々に積極的にお店(会社)の欠点を口コミで広めていきます。激怒者がクレームを言うようになったバージョンといえるかもしれません。積極行動者は、お店(会社)に商品サービスの改善を求めるのみではなく、もっと社会的な対応を求めます。

どちらかといえば、この対象となるお店(会社)は規模が大きな企業であることが多いです。

また、消費者問題などでメディアや世論で大きく取り上げられた問題に関わる業界で、政府などで監視を強化している場合、積極的行動者が活動する可能性は高いでしょう。積極的行動者が生み出される背景には、彼らがクレームを受け入れてもらえない状況に長く置かれていたことがある。

お店や企業によって無視され、軽視されていたことで、「現状のままでは、同じような不満を持つ人々は泣き寝入りになってしまう」と考え、活動を開始するのです。これまでの説明でお分かりかもしれませんが、積極的行動者は必ずしも全ての業種で起きるわけでなく、かなりお客様が問題意識を持つような、社会的影響が大きい分野に限られるかもしれません。積極的行動者とどのように協力的関係を築いていくかは、多くの場合、業界団体のような一組織を超えた対応が必要になります。業界団体などが消費者対応窓口などを設けることで、そこでクレームを受け付け、業界全体で改善を図っていく必要があるのです。

以上で、4種類のクレームを下さるお客様を説明しましたが、ここで重要なことは「クレームを下さるお客様の分類:発言者と消極者」で説明した「発言者」がお店、会社にとってもっとも望ましいお客様なのです。お客様にとっても発言者であることは利点はあるのです。お客様が不都合を感じている点について、ちゃんと主張することで、お店、会社はちゃんと対応するはずです。こういったクレームを通じてのコミュニケーションがいい接客サービス、商品サービスを作り上げていくのです。よいお店、会社はよいお客様が育てるものです。お店や会社もいいお客様を発言者に育てていかなければいけません。

発言者になってもらうため、お店(会社)はクレームをつけやすい環境を作り、対応プロセスをちゃんと整え、誠実な対応をしていくことで、お客様はお店、会社とのクレームコミュニケーションをとってくれる、よいお客様(発言者)になってもらえるのです。


参考文献
ジャネル・バーロウ、クラウス・モレール、井口不二男(訳)「苦情という名の贈り物
」(1999年、生産性出版)