クレーマーの分類
クレーマー、クレームを語るとき、何よりもクレームを下さるお客様「クレーマー」についてよく知る必要があります。
単純な先入観や偏見でクレーマー、クレームに対してはいけません。科学的に捉えていかなければいけません。
最近、話題になっているモンスタークレーマーやモンスターペアレンツと苦情を下さるお客様を同じように考えては、誰に対しても十分に満足感を提供できるわけがありません。それぞれの特性や彼らの目的、行動パターンを踏まえて、ちゃんと納得していただき、満足してもらわなければいけません。
そこで、ここではクレーマーを分類していきたいと思います。
まず、クレームを下さるお客様を2つの軸で4つのカテゴリーに分類してみましょう。一つの軸はクレームを下さるお客様のクレーム内容が客観的・合理性なものなのか、それともお客様の主観的・非合理的なものかによって判断します。
もう一つは、企業のクレーム対応にお客様がどのような反応・行動をしたのかということで判断します。クレームを下さったお客様の反応・行動が、企業が用意したクレーマー対応・クレーム対策マニュアルで対応できる範囲のものだったのか、それとも想定したマニュアルを超え、特別な対応が必要なものだったのかで分類します。
この2つの軸でポートフォリオを作ると、下の図のようになります。
(1)パートナークレーマー
お客様のクレーム内容が客観的・合理的なものであり、企業の想定マニュアル範囲内でクレーム対応できるような場合、そのクレーマーは「企業に貢献くださるパートナー」であるといえます。商品サービスの改善のプロセスにある重要なデータを提供してくださるお客様です。これは企業としてはお金を払ってでも苦情情報をいただきたいわけです。
それをお客様自ら、苦情を言うというストレスがある行動をわざわざしてくださったのであり、企業にとって「パートナー」であると考えるべきです。できれば、このパートナークレーマーには粗品や無料券などの報酬も用意しておいたほうがいいでしょう。そして、いただいたクレーム情報は適切に業務改善プロセスに反映させていきましょう。
(2)ハードクレーマー
お客様のクレーム内容が主観的・非合理的なものであり、企業の想定マニュアル範囲内ではクレームに対応できないようなケースの場合、そのクレーマーは「対応に困難なクレーマー」であるといえます。この種のクレーマーはハードクレーマーといいましょう。あくまでハード(困難)だということであり、悪質なわけではありません。
必ずしもクレームの内容は客観的・合理的である必要なないのです。もしかしたら、クレーム内容にこのような客観性や合理性を求めること自体が企業の商品サービス改善の穴であり、傲慢さの表れなのかもしれません。
常に、自社の商品サービスに批判的な視点を持ち、常に改善を重ねていくことこそが企業の業績を伸ばしていくのです。
想定マニュアルの範囲外だからといって、それが非常識なクレームだとはいえません。このようなクレームが来るのであれば、その背後には同じような不満をもたれているお客様がたくさんいるということです。なんとか組織的に改善していくような努力をする必要があります。
しかし、解決が困難なクレームであることから、全般的な商品サービスの改善には時間がかかることは覚悟しましょう。そこで、ハードクレーマーのお客様には丁寧で誠心誠意の対応をし、感謝の心を表しましょう。
(3)悪質クレーマー
悪質クレーマーはこの4つのカテゴリーから外れたところにいます。そもそも、クレームを下さる目的が企業やスタッフの業務の妨害や名誉毀損など、犯罪的な故意にあるものをいいます。
本来「悪質なクレーマー」とは悪意や企業経営への妨害、さらには職業的なクレーム行動をとっている人なのです。ですから、簡単に悪質なクレーマーという言葉を使うのは不謹慎です。そのような悪質なクレーマーは年に1度といったように、きわめて少数なのです。反社会的団体など、専門に職業として介入してくる人もいます。
このように悪質なクレーマーは一般の企業では十分に対応できない可能性が高いのです。そういう点からこれはクレームというよりは「クレームテロ」といったほうがいいでしょう。
クレームテロは弁護士やクレーム対応専門の企業などへアウトソーシングすることで、早期に解決を図りましょう。一般のスタッフでは話がこじれ、かえって傷口を広げることになるでしょう。
(4)チャンスクレーマー
最後に、お客様のクレーム内容が主観的・非合理的なもので、企業の想定マニュアル範囲内でクレームに対応できるケース、お客様のクレーム内容が客観的・合理的なもので、企業の想定マニュアル範囲内でクレームに対応できないケースの2つのカテゴリーの場合、このお客様は「クレーム対応能力の向上の機会」なのです。いわばチャンスクレーマーなのです。
クレーム内容が主観的・非合理的であっても、マニュアルで対応できるのならば、お客様がどのようなニーズを持っているかを知ることができます。いわば、掘り起こせていない潜在的なニーズを持ったお客様がいるということです。お客様は不満を持っており、それはマニュアル的に解決できるのですから、商品やサービスにしていくこともできるのです。
また、クレーム内容が客観的・合理的で、マニュアルに対応できないのならば、マニュアルの穴、欠陥を見出すことができるのです。
どちらにしても、チャンスクレーマーは企業経営にとって、大切な資源であることは確かです。