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顧客満足のセキュリティ

クレーム対応・クレーム対策を考えるとき、クレーム対応は言うまでもなく顧客満足を目指すものです。

悪質クレーマーがお店や企業に対して理不尽なクレームテロをよこすとしたら、お店や企業側にも漬け込ませる問題点があるといえます。ましてや、悪質クレーマーの経験から、99.999%の一般のお客様へ提供するサービス・商品の質が下がったり、何か不便な状況が生じるとしたら、それはあなたのお店、企業の敗北と考えるべきでしょう。

悪質クレーマーをどれだけ防ぎ、理不尽な要求に防衛体制を築いていくことができるか、さらに、悪質クレーマーの攻撃から生じる影響が一般の良質なお客様に及ばないようにするか、それが顧客満足を目指すための「セキュリティ」なのです。

セキュリティが備わっていない状態の「良質なサービス・商品」は、どんなに良質なサービス・商品であったとしても欠陥があるといわざるを得ません。

まず、悪質クレーマーに対する最低限抑えておかなければならない点を説明します。

●悪質クレーマーのテリトリーに入らない
何事もいえることですが、交渉する際には相手のテリトリーに入らないことが大切です。相手の土俵に上がれば、必ず不利な状況になるでしょう。ここでいう悪質クレーマーのテリトリーとは、家や勤務先などです。多くの場合、悪質クレーマーはプロなので、相手のテリトリーに入ってしまえば、必ずクレーム担当者は理不尽な要求を防御することはできないでしょう。

また、どんな助っ人がいるかわかりません。不確定要素の多い相手のテリトリーには入らないことが大切です。

●密室交渉は厳禁
悪質クレーマーと密室で交渉するのはまったくのナンセンスです。密室で交渉してはならない理由は以下の通りです。

・第三者の目がないため、悪質クレーマーの理不尽な要求がエスカレートしやすい
・犯罪まがいの脅迫や恫喝を証明する方法がない
・監禁される危険がある

何よりも、交渉の状況が第三者の目に触れないため、悪質クレーマーがどんなに脅迫まがいの言動をとっても、それを警察や裁判で証明する方法がなくなるのです。目撃者がいれば、悪質クレーマーも脅迫をエスカレートすることを抑えるでしょう。要求をエスカレートさせないために密室交渉は禁止です。

また、密室に入ってしまえば、悪質クレーマーに監禁される危険が生じるのです。「誠意を見せるまでは帰さないぞ!」などという文句はよくあるもので、本当に監禁されるかもしれないという恐怖心がクレーム担当者の勇気をなくさせる危険があります。悪質クレーマーへの対応は何よりも勇気が必要なことですから、戦意の喪失が起きるような状況に身をおいてはいけません。

●逃げ道の確保
密室に入らないということとも共通しているのですが、必ず交渉のテーブルに着くときは逃げ道を確保しておきます。悪質クレーマーがどんな理不尽な言動をするかわかりません。いったん交渉を打ち切り、帰社することも重要な選択肢です。そのとき、悪質クレーマーが「帰さない!」と実力行使をしたとしても、ぜったいにクレーム担当者が逃げられるルートを確保しておくことが必要です。

●複数人で交渉する
交渉に向かう際にはぜったいに1人でいってはいけません。必ず2人以上で向かいます。悪質クレーマーは多くの場合、普通の人1人よりも迫力やオーラが強いものです。もし、そんな強力なオーラのある人とクレーム担当者が1人で対峙したら、きっと圧倒されてお店や会社に不利な結果になってしまうでしょう。少なくとも人数で優位に立つため、複数人で向かうことは基本中の基本です。

複数人で交渉する場合、主に交渉する役の人を定めておきます。3人で向かって、3人がばらばらにそれぞれの言葉で交渉しては、悪質クレーマーに隙を与えてしまいます。「Aさんはさっき、こういいましたよね」などを言葉尻をつかまれてしまう危険があります。ですから、交渉役の人間を定めて、それ以外の人は記録役に回りましょう。

●記録役をおく
交渉過程をすべて記録することも交渉の際の必須の条件です。交渉過程を詳細に記録することで、

・警察や裁判への証明ができる
・後々の悪質クレーマー対策のデータになる

などの使い方ができるのです。しかし、最も大きな効果は「悪質クレーマーへの無言の圧力になる」ということです。記録役が交渉の席にいて、黙々とメモを取っているという状況は悪質クレーマーにとって、明らかにプレッシャーになります。記録がとられているということは、証拠になるということであり、理不尽な要求をエスカレートさせれば自分に不利になると思うでしょう。要求のエスカレートを抑制する効果があります。


●説得ではなく、交渉をめざす
悪質クレーマーへの対応は、普通のクレーマーへの対応とまったく違う点があります。それは「悪質クレーマーはクレームをつけることが目的」だということです。悪質クレーマーはプロフェッショナルなので、クレームをつけ、そこから何らかの利益を得ることが仕事です。その点で、明確な目的意識があります。

ということは、クレームが正しいか間違っているかは二次的な問題で、得られる利益を最大化するためのツールに過ぎません。

クレーム担当者がとるべき態度は「納得していただくこと」ではなく「折り合いをつけ、交渉を成立させること」なのです。

交渉相手の目的を理解した上で、クレーム担当者は交渉することが必要でしょう。無駄に論争するのではなく、どれだけ損害を少なくするかという「商談」として考えてください。


●弱気な態度は厳禁
悪質クレーマーとの交渉は「商談」なので、弱気な態度は厳禁です。反対に、相手を見下したような横柄な態度も厳禁です。

あくまで、賢明に、誠意をもって対応しているというビジネスライクな態度をとりましょう。そして、いつも自信を持っているように心がけ、弱気な様子を見せてはいけません。
自然な行動を心がけて、緊張したり、動揺したりする心の動きを悟られないようにします。


●不用意に謝らない
これは普通のクレーム対応の基本とは反対のことですが、悪質クレーマーの場合、交渉ではなく、商談ですから、不用意に謝罪をしてはいけません。

謝罪は損害賠償を認めたことになりますし、後々に大きく不利な状況を生み出すことになります。