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クレームの「ストレス軽減」と「顧客満足」は両立できるか?

「クレームからのストレスの回避法『Over-Conforming』」「クレームからのストレスの回避法『接触抑制』」と、クレーム担当者のストレスを軽減するためには、どうしたらよいのか、ストレス軽減法を説明してきました。これらのストレス軽減法によって、スタッフがクレーム、クレーマーから受けるストレスを軽減できるのですが、反面、お客様の満足度はどのような影響を受けるかも重要です。

どんなにスタッフが心地よく働けたとしても、お客様の満足度が低下してしまっては、元も子もありません。「スタッフ満足・お客様不満足」では、企業・お店の事業継続は難しいことでしょう。

スタッフが心地よく働ける環境であるとともに、お客様が十分に満足できるクレーマーマネジメントを行い、お客様の満足度を向上させていかなければいけないのです。いわば、「スタッフの満足度」と「お客様の満足度」を同時に満たす必要があるわけです。

では、これまで説明したようなストレス軽減法を実行したら、お客様の満足度はどうなるでしょうか?言うまでもなく、あまりよい影響は与えません。

このような軽減法を実行したら、お客様の立場から見れば、極めて消極的な態度、もしくは横暴な態度をとっていると受けとめることでしょう。もしお客様に、そのように受け止められたとしたら、マネジメント上、最悪の結果といえるでしょう。お客様は企業やお店に対して、悪いイメージを持つでしょうし、何よりも、お客様がもたらす経営情報としての苦情やクレームが集まらなくなります。会社や店が、お客様が持っているニーズ(needs)やウォンツ(wants)を把握できなくなるということです。「あのお店(会社)に苦情を言っても、いやな思いをするだけだよ」「あのお店(会社)は利用しないほうがいいよ」という、最悪な口コミが広がってしまうのです。クレームを言う前に、お客様はこのような稚拙なクレーム対応しかできない会社や店から逃げていってしまうのです。

さらに、クレームストレス軽減法を実行していると、お客様がスタッフから横暴で、冷淡な対応をされたと受け止めると同時に、お客様の(スタッフやお店に対する)態度も冷淡で、横暴なものになってしまうのです。互いに冷淡で横暴な態度をとっているコミュニケーションはどんなに絶望的なものでしょうか。想像するまでもないでしょう。

また、クレーム担当者がストレスを軽減するために、結果的に会社や店には「官僚的な気風」が満ちてしまいます。マニュアル対応、機械的な処理が行われるからです。クレーム対応のみならず、会社や店のサービス全体が硬直化して、競争力を失ってしまうことでしょう。

このように、クレーム担当者が自分の精神的な健康状態を守ろうとして自主努力をした結果、お客様にも会社や店にも悪い結果をもたらすことになるのです。

では、どうしたらいいのでしょうか。

やはり、組織としてクレーム担当者のメンタルヘルスに関する対策をしっかりと整備していく必要があるでしょう。具体的には、

(1)適材適所
(2)教育訓練
(3)エンパワメント(権限委譲)
(4)組織全体で共有

といったものが考えられます。次回以降、この組織的なクレーム担当者メンタルヘルス対策を取り上げます。